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やさしい病気の話

今回は「糖尿病の話」と題して大曲中通病院内科の坂東慎一郎先生が話題を提供します。

糖尿病ってなに?

私たちが生きてゆくためには、ブドウ糖という糖が必要です。ブドウ糖は、心臓を動かしたり呼吸をしたりモノを考えたり筋肉を動かしたりするエネルギーです。このブドウ糖は普段は肝臓などに蓄えられていて、必要な時に血液中に放出されます。なくては困るブドウ糖ですが、ありすぎても困ります。余分なブドウ糖は全身の血管や神経を傷害するからです。糖尿病というのは、血液中の余分なブドウ糖が全身の血管や神経を傷害して、さまざまな余病(糖尿病の合併症)を起こす病気です。

糖尿病を放っておくとどうなるの?

血液中にブドウ糖があふれている状態、つまり血糖値が高い状態を長く放っておくと、余分なブドウ糖が全身の血管や神経を少しずつ傷害してゆき、さまざまな故障がおきてきます。これを糖尿病の合併症(余病)といいます。眼の網膜というところの血管が傷害されると、視力が低下したり失明することがあります。腎臓障害がおこると体がだるくなったり手足がむくみ、悪化すると血液透析を行わなければ生命を保つことができません。神経障害では、足がしびれたり痛みを感じなくなったり、立ちくらみ、便秘や下痢、排尿障害もおきます。その他、心筋梗塞や脳梗塞の原因にもなりますし、感染症に罹りやすくなったり、糖尿病性壊疽といって足が化膿(腐る)したりもします。これらすべての合併症は自覚症状を感じないまま進行し、調子がおかしいと気づいたときにはかなり進行しており、手遅れのことも多いのです。自覚症状が出る前に手をうつことがたいせつです。

どうして糖尿病になるの?

筋肉や脂肪などの細胞がブドウ糖を取り込む時、インスリンという物質が必要になります。インスリンというのは、ブドウ糖が(筋肉や脂肪などの)細胞の中に入るときの、いわば扉を開ける鍵のようなものです。インスリンというのは、胃袋の後ろ側にある膵臓から分泌されます。
何らかの原因で膵臓からインスリンが出てこなくなったり、インスリンはじゅうぶん出てきてもうまく働けなかったりすると、ブドウ糖は(筋肉や脂肪などの)細胞に取り込まれずに血液中にあふれ、血糖値が高くなります。

血糖値が高いときの症状は?

血糖値がかなり上昇すると、のどが渇いたり体がだるくなったり、昼夜関係なくたくさんのおしっこが出てきたりします。何も飲まなくてもおしっこが出て喉は渇き、いくら飲んでも喉の渇きはおさまりません。こんなときは体の状態もあまりよくないので、すぐに受診しましょう。
こういった自覚症状が出てくるのはよほど血糖値が高いときです。血糖値が少しぐらい高くても自分ではなんとも感じません。なんともないからといって放っておくと、何年か先には必ず糖尿病の合併症に悩まされることになります。

糖尿病の原因ってなに?

糖尿病の原因には様々なものが考えられています。たとえば1型糖尿病というのは、主に免疫機序によって自分の膵臓が破壊されてしまい、インスリンが分泌されなくなってしまう病気です。日本人の糖尿病の9割以上は2型糖尿病で、肥満や運動不足ではインスリンが働きづらい体質になり、その分を補おうと膵臓が一生懸命頑張って疲れてしまい、インスリンが十分分泌されなくなってしまう病気です。その他にも頻度は僅かですが、特定の遺伝子的原因によるもの、膵炎や膵癌によるもの、甲状腺などの内分泌器官の病気によるもの、ある特別な薬剤によるものなどがあります。

糖尿病の予防方法はあるの?

残念ながら今の医学では完全な予防方法はありません。肥満がなくても、甘いものを好まなくても、糖尿病になってしまう人はいます。ただ2型糖尿病については、なるべく発症する時期を遅らせることができます。糖尿病の発症を10年、20年と遅らせることができれば、生きているうちには糖尿病にならないかもしれません。なっても軽くて済むでしょうし、糖尿病の合併症にはそれほど悩まされずに済むはずです。
日本人は欧米人に比べて膵臓が弱く、2型糖尿病になりやすいといわれています。2型糖尿病の予防や治療の考え方は、インスリンを分泌する膵臓になるべく負担をかけないようにするということです。
肥満や運動不足があるとインスリンがうまく働けず、その分膵臓に負担がかかってしまいます。肥満や運動不足を解消することです。暴飲暴食も余分な血糖がつくられ、それを処理するために膵臓に負担がかかります。余計なものを食べないようにすると、膵臓の負担は軽くなります。

合併症に悩まされないために

少なくとも年に一度は、糖尿病の検査をしましょう。市や町の検診や会社の検診を利用しましょう。早期発見、早期治療がたいせつです。
運動をしましょう。一日15分から20分程度でも、週3回以上行うと、段々インスリンが効きやすい体質に改善されます。何年でも続けることが大切です。血糖値を下げるという意味では食事の30分後くらいから始めるのが効果的です。好きな運動でよいのですが、今まで運動しなかった人が急に始めると怪我をします。軽い散歩くらいの運動から始めるとよいでしょう。持病のある人は、主治医に相談してから始めてください。
食生活に気をつけましょう。一日三食腹八分目で不必要な間食(おやつ)はしない、油ものや塩分は控えて野菜を多く摂る、糖分の入った甘い食べ物や飲み物は摂らない、ハンバーガーやフライドチキンなど油の多い食べ物も食べない、ということを心がけましょう。ただし、極端な食事制限はダイエットに失敗するばかりか健康をも害します。短期間での極端な体重減少には気をつけましょう。
できるところから実行してみてください。きっと生活も快適になるでしょう。

(坂東慎一郎)