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やさしい病気の話

今回は「更年期と更年期障害の違い」と題して田口 圭樹先生が話題を提供します。

「更年期」とは「卵巣の働きが低下」する時期で、一般的には閉経前後の10年間の性成熟期と老年期の間の期間を指します。「更年期」自体は期間を示す言葉であり、病気ではありません。「閉経」とは加齢により月経が1年間停止した時点を指す言葉で、後で振り返ってみないと分かりません。日本人の平均閉経年齢はおよそ50歳です。これに対し「更年期障害」とは更年期にみられる自律神経失調症(のぼせ・ほてりなど)を中心とするつながりのないさまざまな訴え(不定愁訴といいます)を引き起こす病気です。閉経に先んじて様々な更年期障害が出現する場合も決して少なくありません。更年期障害を狭い意味で捉え「卵巣ホルモンの減少による卵巣の働きが低下するためにのみ起きる病気」とする場合もあります。

つまり、「更年期」「閉経」は誰にでも必ず起きますが、「更年期障害」は必ずしも起きるとは限らず、ある調査によれば更年期婦人の約2割に認められるとされています。

この更年期は1)舅・姑の老化に伴う介護・世話の時期 2)両親の死に直面する時期 3)子供が親元を離れる時期 4)社会的に責任が重いポジションに置かれる時期です。つまりこれらが「ストレスの引き金」となり、心身症や神経症、うつ状態などのストレス病など、さまざまな不定愁訴を惹起し易い状況にあります。

すなわち、更年期障害は「卵巣の働きの低下」のみの原因によると思われる症状や、「更年期婦人の生活背景の特徴」「その婦人の性格」などホルモン以外の原因によると思われる症状が複雑に入り混じる病態です。極論するなら「一つとして同じ更年期障害はない」と言えるでしょう。つまり、卵巣の働きの低下のみによる症状を訴える患者さんと、その他の原因によってさまざまな症状を訴える患者さんで治療方法が異なるのは当然なわけです。

つまり更年期障害の診療で最も大事なポイントは「その症状がホルモンの減少が原因で起きているのかそうでないのか?どこに重きを置いて治療するのがベストなのか?」を患者さん個々に診察し、最良の治療法を選択する事だといえるでしょう。

(田口 圭樹   07.11.08.)