昆虫の中で羽に鱗粉をもつグループ(チョウやガ)を鱗翅類といい、その幼虫には明らかな毛を有するもの(毛虫)と、毛のないもの(芋虫)があります。毛虫と呼ばれる幼虫の中には有毒毛をもつものがいくつかあり、それに触れることで皮膚炎が起こります。有毒毛には毒針毛と毒棘がありますが、いずれもガのごく一部の幼虫だけが有しており、皮膚炎の発症メカニズムは異なっています。
毒針毛を有するのはドクガ類(ドクガ、チャドクガ、モンシロドクガなど)が代表的で、その幼虫には一匹あたり数十万本~数百万本の毒液を含んだ毒針毛(長さ0.1~0.2mmの粉のようなもので、肉眼では見えにくく、顕微鏡では針のように見えます)があり、これが皮膚に突き刺さって皮膚炎を起こします。
その毒針毛は卵や繭の表面、幼虫の脱皮殻や成虫の尾端部にも付着しており、これらに触れても皮膚炎が起こります。
かなり個人差はありますが、毛虫(毒針毛)に触れる機会があって数時間以上経過してから発症することが多く、集簇性あるいは散在性の丘疹(大きさ半米粒大~小指大のブツブツ)で、通常非常に強い痒みを伴います。なかには不眠を訴えることもあります。
当地域での発症時期は、おおむね4月末(ゴールデンウィークの初め頃)から10月中旬頃までかと思われます。
次のような時に発症することが多いようです。
以上、1~7のように直接毛虫には触れなくても、毛虫が動き廻ったりして、毒針毛が落ちていると思われるようなところでも、やられることがあるようです。
また、毒針毛の、その大きさからして、衣服類も容易に通過するためか、気をつけて長袖などの衣服で覆っていたにもかかわらず、ひどくやられる場合も見られます。
症状の程度にもよりますが、痒み止めを塗るだけのようでは皮疹(出物)はなかなか消失を見ず、数週間もそれこそ痒みに悩まされることがあるようです。
一般的には、湿疹や接触皮膚炎(カブレ)に準じて、外用剤(つけ薬)にはステロイド剤を、程度によっては内服(抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤)を併用します。
気をつけたいのは、特に夏季の発症時、痒みによる引っかきキズに発汗などの影響も加わり、細菌感染(バイ菌がついて)を起こし膿痂疹(とびひ)になることもあります。
まもなく季節が到来します。いくらか参考にしていただけたでしょうか。
(石河 知之 08.06.23.)