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やさしい病気の話

今回は子育て環境の変化と病気の変化と題して五十嵐 希世志先生が話題を提供します。

外来で仕事をしていてここ数年、春になると同じ症状の子供が多いので、私が思うことを述べたいと思います。

親御さんが訴えるのは大体同じような症状です。「うちに子の風邪がもう一ヶ月も治らない」「熱が二週間も下がらない」などなど

まさか薬も飲んでいないのかと思うと、普段は近くのかかりつけの医者に通っているが、いつも同じような薬なので、もっと効く薬が欲しい。そしてこんなに長くかかるのは絶対おかしいから、しっかり検査して欲しい、だからわざわざ病院に来たんだと私に訴えます。

確かに稀には免疫不全の子もいますが、そんなに頻度の高い病気ではありません。その場合子供もぐったりしているはずですが、真剣に訴えている親御さんを尻目に、病院に置いてあるおもちゃで、楽しそうに遊んでいて、あまり具合が悪そうにも見えません。何より、病院に来て熱を測ると平熱に戻っていることも多いようです。

もう少し話を詳しく聞くと、一ヶ月間同じ症状のままではなく、最初は鼻水だけだったのが、咳がでてきたり一旦改善したら今度は下痢になったり、熱も数日続いた後で一旦下がり、また一日か二日してから上がってというのを繰り返して二週間になっていたりというのがほとんどです。要するに同じ風邪が長引いているわけではなく、治っては別の風邪をひいてというのを繰り返しているだけなのです。そしてみんなに共通するのは、春から保育園に通わせ始めたという事情です。

集団生活を経験する前の乳幼児は、特に少子化で上に兄弟がいない場合は、かかっていない風邪が無数に残っています。そして保育園には風邪をひいている子が必ずいます。昔は広い野原で勝手に遊んでいたものですが、今は保育園の敷地内で、密集して世話をされるので、風邪をひいた子とも濃厚に接触します。そのため、風邪をもらうのは無理もありません。そして、数日保育園を休んで仕事にも支障を来たした親御さんは、症状が少し良くなれば、すぐにまた保育園に預けます。するとまた別の風邪をもらって熱を出して、職場に保育園から連絡が入ります。高い保育料を払っているのに一ヶ月の半分も預けられない、ということになります。

一番いいのは保育園に行かずに自宅にいることですが(笑)、最近の経済事情では難しいかもしれません。こういう状態を三ヶ月から半年繰り返すと、ひく風邪も少なくなって丈夫になりますが、それまでは我慢するしかありません。最近は保育園で飲ませてくれないので一日二回で処方してくれという訴えも多くなりました。言われるままに出してはいますが本来三回飲むものを二回にして効果が上がるか疑問を感じます。良かれ悪しかれ最近は保育園を中心に小児科の仕事は動いているような気がします。  

(五十嵐 希世志  10.10.02..)