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やさしい病気の話

今回は「〜血管の健康を維持しましょう〜脳と心臓を守るために」と題して高橋 良一先生が話題を提供します。

血管を健全にしておくことは健康の維持に欠かせません。動脈硬化が進むと血管の内側に脂肪などの固まりができ、血管が狭くなり、ひどいとつまってしまいます。脳や心臓は血管の流れが妨げられるのにとりわけ弱いものです。動脈硬化により引き起こされる脳梗塞や脳出血、心臓では冠動脈が障害される狭心症や心筋梗塞がその典型です。腎臓の場合には悪循環になり、腎不全へ進みかねません。では、動脈硬化を進行させないためにはどうしたらいいでしょうか。

まず生活習慣の改善から始めなければいけません。塩分を減らし、肥満のある場合には食事療法をし、適度な運動をすることが必要です。
動脈硬化を進展させる危険な要素として「高血圧」「糖尿病」「脂質異常」「喫煙」が挙げられます。これらを避けるためには血圧、血糖値、脂質が基準範囲内に入るよう修正する必要があります。
メタボリック症候群は、内臓肥満が中心になり、インスリン抵抗性が糖尿病・高血圧・脂質異常を引き起こすため注意が必要です。へその回りの腹囲が男性で85センチ、女性で90センチを超えている場合はメタボリック症候群の可能性があります。
血圧は24時間にわたって厳格に管理することが重要です。一般の高齢者での目標は収縮期血圧を140ミリHg、拡張期血圧を90ミリHgより下にすることです。糖尿病や慢性腎臓病、心筋梗塞後の方の場合にはより厳しく、収縮期130ミリHg、拡張期80ミリHg未満が目標となっていることに注意が必要です。患者さんからは反発を受けそうですが、高血圧を研究している学者からは低ければ低いほどよいという言葉も伝えられています。
薬を飲んでいても、これらの降圧目標を達成している人の割合が意外に低いことが全国的な調査から分かり問題になっています。患者が処方された薬を継続してきちんと服用しているかどうかを、医師の間では「アドヒアランス」と呼んでいますが、これも関与しているかもしれません。

心臓が血液を十分に送り出すことができなくなる慢性心不全の原因として狭心症などのほかに高血圧があります。降圧薬を服用している方が急に服用を止めると心不全になることもあるので気を付けましょう。
血圧を下げる薬は主なものを系統別にして数種類ありますが、その進歩は目覚しいものがあります。単に血圧を下げるのみでなく、心臓や腎臓などの臓器保護も兼ねるようになってきています。軽度の高血圧は1種類の服用で十分ですが、多くの例は2~3種類を病状に考慮しながら使うことになります。家庭で測る血圧は診察室で測る血圧よりも5ミリHg低いとされています。家で血圧を測ることは早朝高血圧の発見などに役立ちます。脂質異常を改善するスタチンという薬は他に動脈硬化を抑えるいくつかの働きがあり重宝されています。
また、タバコの煙による受動喫煙の害が社会問題になっています。外国では公園や海岸での禁煙も検討されていますが、屋内での禁煙をさらに推し進めるべきでしょう。

(高橋 良一  11.5.10.)