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やさしい病気の話

今回は「〜ゆとりの心が生殖も助く〜生殖説法」と題して佐藤 学先生が話題を提供します。

2年ほど前に「もしも秋田が人口100人の村だったら」という新聞記事が掲載されたことがあります。これによりますと、全国の出生率が28年間連続で減少し、秋田でも少子化が進み子供の占める割合は全国最低の11.5%でした。経済の低迷も手伝い秋田では1年間に1人死んで1人生まれ、1人転入し2人外へ出ていく計算です。よって10年後には90人の村民しか残らない事になります。

婚活が流行っていますが、結婚する機会に未妊の検査を始める方もいます。しかしあまりあせるのも禁物。何の原因もない健康な夫婦が排卵日を狙っても妊娠率は10~20%前後と言われているからです。つまりほとんどの人は赤ちゃんが出来るのに数ヶ月はかかるわけです。ところが最近は現代病と言われる子宮内膜症や性感染症と精子減少症例が増加し受精妊娠できない方も増加中です。診療所では様々な原因を探り赤ちゃんが家庭に授かるように検査や指導をしています。

原因が卵管の場合、子宮内膜症やクラミジア感染などにより卵管が閉塞し、排卵された卵子と精子が巡り合えない事によります。子宮卵管造影法で通過障害を診断します。排卵障害が原因の場合、卵巣機能不全や多嚢胞性卵巣症候群の病態が有ります。ホルモン値を診て適切なホルモンを補充します。
受精しても卵が着床しない着床障害の方も居ます。子宮内の異常で子宮筋腫や子宮内膜ポリープも着床の妨げになります。黄体ホルモン補充が重要です。
来院時に持参して欲しいのが婦人体温計による基礎体温表です。安価で他の検査を行う時期の指標になり有効です。女性ホルモンのバランスを診る採血や排卵期の超音波をする時、フーナーテストや高温期の採血の際は時期を指定可能です。月経中の検査として貧血・抗精子抗体・月経血培養検査等があります。女性側に原因が見付かっても通常は排卵の前後来院し夫婦生活を図るタイミング療法が一般的です。

日本男子は平均精子数が減少してきています。時期を選ばない検査です。男性因子が判明した場合には漢方薬(八味地黄丸、補中益気湯など)を内服して改善する治療もあります。精子の受精能を補助する方法として人工授精があり、さらに重度の精子異常の場合には顕微授精という高度生殖医療に進みます。
女性の子宮の入り口の頸管粘液に原因がある場合にも人工授精が必要になります。人工授精とは洗浄した運動精子を子宮内へ届ける方法です。卵管閉塞や原因不明の場合には体外受精が選ばれます。これは卵子と精子を体外で培養液中に受精させた受精卵を子宮内へ入れる方法です。

逆に嗜好品(タバコや晩酌)を変えるなど、生活を規則的にするだけでホルモン状態が良くなる方も居ます。食べすぎや過剰なダイエットを止めると妊娠する方も居ます。漢方薬が効く方も多いです。冷え、ストレス、太りぎみ等があれば診療所へ相談にいらして下さい。やはり精神的な負担も妊娠力に大きく影響します。あと少し肩と心の力を抜いて一昔前の秋田県の交通標語「ゆとりで走ろう秋田県」をモットーにすると案外早く赤ちゃんに巡り合えたりします。

(佐藤 学  11.6.13.)