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やさしい病気の話

今回は「〜沈黙の臓器〜肝臓の病気について」と題して中島 康先生が話題を提供します。

健診などで、肝機能の異常がチェックされた経験がある方は少なくないと思います。肝機能異常の中には経過観察だけでよいもの(治療が不必要)から、放置すると肝硬変や肝がんに移行するものまでさまざまです。そこで、主な肝臓の病気について以下に述べたいと思います。

アルコール性肝障害

軽度な順から、アルコール性脂肪肝、アルコール性肝線維症、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変の4つに分類されます。個人差もありますが、1日に日本酒2合以下(ビールなら大ビン2本以下)であれば、肝障害の起きる確率は低くなります。

脂肪肝(非アルコール性)

肥満、糖尿病、高脂血症などが原因となります。予後のよい単純性脂肪肝が多いですが、一部に肝硬変、肝がんへと進行するタイプ(NASH、ナッシュ)があるので、注意が必要です。

ウイルス性肝炎

A型肝炎

ウイルスに汚染された水、貝類などを介した口からの感染で、急性肝炎を発症します。慢性化せずに治癒します。

B型肝炎

血液を介した感染です。急性肝炎で治癒する場合と、慢性肝炎から肝硬変、肝臓がんへと進行する場合とがあります。B型肝炎には、キャリアといって、ウイルスが血液中に存在しても、肝臓に炎症をおこさず肝機能も全く正常な人が多数みられます(日本人の1%)。キャリアの人は、基本的には治療不要です。B型慢性肝炎、肝硬変の患者さんに対する治療は、ここ数年大きな進歩があり、有効な抗ウイルス薬(エンテカビル)が使用可能になっています。

C型肝炎

血液を介した感染です。わが国には約200万人の患者さんがいます。慢性肝炎から肝硬変、肝臓がんへと進行する場合があります。年齢、肝機能の数値、ウイルスの量、血小板数などより治療法を選択します。治癒をめざすには、ペグインターフェロン・リバビリン併用療法(週に一回の皮下注射と飲み薬)が最も有効です。この治療で約60%の患者さんが治癒します。インターフェロン治療に関しては、現在、治療費の公的助成制度があり経済的な負担は軽減されています。また、新しいC型肝炎治療薬もいくつか開発中であり、インターフェロンが無効であった場合でも今後に期待ができるので、現在の肝機能を悪化させない維持治療が重要です。
B型肝炎、C型肝炎については、日常生活で感染する心配はまずありません。

その他

薬剤や健康食品による肝障害、自己免疫性の肝障害などがあげられます。

(中島 康  11.7.8.)