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やさしい病気の話

今回は「アニサキスについて」と題して佐藤 裕明先生が話題を提供します。

みなさん、アニサキスって知ってますか?「兄先す」ではありませんよ。そんなに珍しい病気ではないので、皆さんもかなりの方が痛い目に遭っているのではないかと思います。
私たち日本人は、新鮮な食材を生で食べるのが大好きです。お寿司やお刺身はおいしいですよね。今では欧米でも大人気です。
しかし、生の食材の恐ろしいところは、常に寄生虫を口にする危険性があるということです。「アニサキス」というのは、クジラやイルカなど海産哺乳類の胃に寄生する虫です。

私たち日本人が、クジラやイルカを食べることによってアニサキス症にかかるわけではありません。サバやアジ、イワシ、スルメイカ、ニシン、スケトウダラなどの海産魚の腹腔内臓器の表面や筋肉内にコイル状に寄生している、アニサキスの幼虫を食した時に感染するのです。幼虫は、体長が2縲鰀3センチで乳白色の虫体です。刺身のツマの大根と間違えて食べてしまう人もいますので注意してください。

魚類を生で食べた後、数時間(多くは2~8時間程度)で上腹部の不快感に始まり、その後、急激にみぞおちの部分に痛みがおきます。激しく刺し込むような痛みで、吐き気・嘔吐を伴うこともあります。特徴は痛みが断続的で、ピタリと止まったりまた痛んだりと繰り返すことです。
アニサキス症は、食中毒と違って下痢をすることがありません。また、発熱もありません。アニサキス症患者の胃を内視鏡で見てみると、幼虫が胃壁に突き刺さり、ドリル状に回転して胃壁の中に潜り込もうとしているのが見られます。それによって胃に穴があくことはありませんが、もし、腸にアニサキスが入り込むと腸閉塞を起こすことがあります。

治療は、内視鏡で一匹ずつ鉗子を使って取るしかありません。しかし、アニサキスの幼虫は人間の体内では長く生きられませんので、放置していても死滅してしまいます。
生の食材を食べる際、ワサビや辛子などの調味料を使用してもアニサキス症を予防することはできません。予防する方法をあえてあげるとすれば、ネタをよく見てよく噛んで食べることでしょうか。みなさんがアニサキスに遭遇しないことを祈っています。

アニサキスとは・・・

体長2~3センチで、イルカやクジラなど海産哺乳類の胃に寄生している線虫です。
アニサキス症の症状は、みぞおち部分に強く断続的な痛みを訴える例が多く、そのほかに吐き気や嘔吐などを伴います。
専門医を受診する際は「何をいつごろ食べたか」を説明すると早期診断につながります。
刺身など生の食材は、注意して食べましょう。

(佐藤 裕明 11.12.13.)