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やさしい病気の話

今回は「緩和ケアについて~その人が“大切にしたいこと”を支える~」と題して秋山 博実先生が話題を提供します。

がんの治療法は進歩しており、「がんになったら終わり」という時代ではなくなっています。最善の治療をしても完全には治せない場合がありますが、たとえ治療が難しい状態でも、つらさを和らげ、その人らしく生きていくことを援助することは可能です。
ある調査によると多くの人が「終末期に大切にしたいこと」は、

  1. 苦痛がない
  2. 望んだ場所で過ごす
  3. 希望や楽しみがある
  4. 医師や看護師を信頼できる
  5. 家族の負担にならない
  6. 家族や友人とよい関係でいる
  7. 自立している
  8. 落ち着いた環境で過ごす
  9. 人として大切にされる
  10. 人生を全うしたと感じること

でした。これらの「大切にしたいこと」を支えていくのが緩和ケアの役割です。

緩和ケアとは、がんなどの生命を脅かす病気にともなって起きる体と心、生活上のさまざまなつらさを和らげ、患者さんとご家族ができるだけ自分らしい生活を取り戻すことを目標とするケアです。
緩和ケアは一般病棟や外来でも受けることができます。症状緩和の専門医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなどからなる「緩和ケアチーム」が主治医や担当看護師と協力しながら緩和ケアを提供しています。通院して緩和ケアを受けることが難しくても、自宅に居ながら、さまざまな訪問サービスを受けることが可能な場合もあります。
緩和ケアを専門的に行う病棟は「緩和ケア病棟」と呼ばれています。通院や訪問サービスでつらさを和らげることが難しい患者さんが利用します。緩和ケア病棟では、静かで穏やかな環境で生活できるように工夫されています。ご家族との時間を大切にできるよう、面会、外出、外泊の制限は一般病棟に比べて緩やかです。また体調が落ち着けば退院もできます。

国は平成19年にがん対策基本法を制定し「緩和ケアを早期からどこにいても受けられるようにする」ことを国と都道府県の責務であるとしました。ところが、調査によると体の苦痛が少なく過ごせたがん患者さんは半数に過ぎないなど、日本の緩和ケアの現状は決して満足できる状態ではありません。

仙北組合総合病院ではがん診療連携拠点病院として緩和ケア病棟の開設を含め、みなさんに質の高い緩和ケアを提供できるよう努めています。みなさんのご理解とご協力をお願いします。
このように緩和ケアはいろいろな場所で受けられるようになってきています。詳しくは主治医や病院の医療相談室へ相談ください。

(秋山 博実 12.04.18.)