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やさしい病気の話

今回は「過敏性腸症候群について」と題して柳田 弘人先生が話題を提供します。

過敏性腸症候群とは、腸に形態的な異常がないにもかかわらず、下痢や便秘などの便通異常を伴う腹痛や腹部不快感が慢性的に繰り返される病気です。ストレスが関与しているといわれていて、ストレス社会の到来により今では誰もが発症する可能性のある現代病の一つです。過敏性腸症候群は大きく下痢型、便秘型、そして下痢と便秘を繰り返す交替型に分けられます。男性は下痢、女性は便秘の症状が現れるケースが多いようです。
過敏性腸症候群の原因は、まだ完全には解明されていません。しかし、ストレスが大きく関与していることは間違いないようです。さまざまなストレスによって腸の機能を調節している自律神経の働きが乱れると腸の運動機能が異常を起こし便秘や下痢になります。また、腸の痛覚が敏感になるため腹痛も起こりやすくなります。
人によって症状の出方はさまざまですが、特に下痢型の場合はストレスがかかるタイミングで症状が現れたり、休日には症状が出にくかったりという特徴があります。また、通勤・通学中にお腹が痛くなったり、テストの直前に便意をもよおしたりもします。不登校や欠勤、遅刻を引き起こす原因になっているケースもあるようです。
過敏性腸症候群そのものは命にかかわる病気ではありませんが、この病気による学業や仕事の能率低下、症状が現れる不安からくる動悸や抑うつ、不眠、疲労感などの症状が現れてくることがあります。そのストレスがさらにストレスを呼び、悪循環に陥ることも考えられます。早めに医療機関で受診することをお勧めします。

診断には問診が最も大切ですが、他の病気を否定するためにある程度の検査が必要です。治療としてはストレスの回避が一番ですが、回避できない場合はライフスタイルの改善が治療の第一段階です。暴飲暴食を避けて、規則的な食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけましょう。
薬は、従来からある消化管機能改善剤や便性状改善剤のほか、脳がストレスを受けると増えて腸の働きを活発にするセロトニンの働きを抑える薬なども使われています。また、精神安定剤や抗うつ剤などが処方される場合や自律訓練法などの精神療法が必要になることもあります。

独りで悩んでストレスをため込まないよう、早めに医療機関で受診しましょう。

(柳田 弘人 12.05.28.)