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やさしい病気の話

今回は「腹圧性尿失禁について~40歳以上の女性に多く見られます~」と題して岡根 克己先生が話題を提供します。

「咳やくしゃみをしただけで尿がもれる」「尿もれが心配で旅行に行けない」「笑うと尿もれするため思い切り笑えない」
人知れずそんな悩みを抱えている人が実は意外に多いものです。
尿もれ(尿失禁)とは、自分の意志とは関係なく尿がもれてしまう症状のことで、この尿もれに悩んでいる人は全国で約800万人いると言われています。尿もれの経験者は特に40歳以上の女性に多く、その原因の大部分は「腹圧性尿失禁」と言われるものです。
腹圧性尿失禁とは文字通り、咳やくしゃみなどでお腹に力がかかったときに、尿がもれてしまう症状のことです。「骨盤底筋」という、骨盤の中の臓器(膀胱、子宮、直腸等)を支えている筋肉のゆるみにより生じます。この筋肉がゆるむ最大の原因は出産と言われていて、腹圧性尿失禁の9割以上が出産経験者です。

腹圧性尿失禁は、症状が軽い場合は骨盤底筋を鍛える事により尿もれを防ぎ、改善することができます。具体的には肛門や膣をギューっと締めて10秒くらいしたら力をゆるめて30秒くらいリラックスするという方法を10回繰返してください。また、肛門や膣をすばやく締めたりゆるめたりといったトレーニングも有効です。このようなトレーニングを3カ月行うと、軽度の腹圧性尿失禁の方の3人に2人は改善します。
また、便秘や肥満にも注意が必要です。がんこな便秘は膀胱や尿道を圧迫し、尿もれの症状を悪化させます。肥満も常にお腹に圧力がかかるため、ちょっとしたことで尿もれを起こしやすくなります。

骨盤底筋体操などで改善しない尿もれは、他の原因も考えられますので、思い切って専門医に相談した方がいいでしょう。内服薬や手術で改善する方法もあります。また、薬の副作用で尿もれを起こしていることもあります。このような場合は薬を変えるだけで尿もれが改善されることがあります。
特に手術療法に関しては、最新のTOT手術と呼ばれる手術があります。これは、ポリプロピレン製テープで尿道を支える事によりお腹に力がかかった時、尿道を閉鎖させ尿もれを防ぐ事ができます。20〜30分くらいで、比較的簡単に手術可能で、ほとんどの方がこの治療により症状がなくなります。

このように腹圧性尿失禁は適切な治療を行えば、ほとんどの方が治る病気です。尿もれが 気にならなくなれば今まで敬遠していた旅行にも行けるようになりますし、思い切り笑うこともできます。独りで悩まず気軽に専門医に相談してください。
人生が変わるかもしれませんよ。

(岡根 克己 12.06.28.)