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やさしい病気の話

今回は「吸入療法の有用性について~全身性の副作用が出にくい局所的治療法~」と題して進藤 勉先生が話題を提供します。

今回は、気管支喘息や、たばこ病といわれる慢性閉塞性肺疾患(COPD)で用いられる吸入療法の有用性についてお話します。
喘息は、吸い込んだ物質や風邪などがきっかけで、空気の通り道(気道)にアレルギー性の炎症が生じて気道がむくみ、気管支をとりまく筋肉が収縮して気道が狭くなる病気です。
一方、COPDは、たばこ煙などの有害物質による炎症のため、気道が狭くなり、また肺胞と呼ばれる気道の末端の構造が壊されてしまうことで、肺の収縮力が損なわれ息が吐き出しにくくなる病気です。
これら2つは全くの別物ですが、どちらも気道が狭くなっているという共通点があります。

喘息はアレルギー性の炎症が治まると気道の広さが回復しますので、炎症を鎮める抗炎症薬が一番大切な薬になります。そして、気管支を広げて呼吸を楽にする気管支拡張薬が補助的な位置付けになります。
これに対してCOPDでは、壊れた肺を元に戻すことはできず、気道炎症の関与はあるものの抗炎症薬の効果は限定的ですので、治療の主体は気管支拡張薬になります。

さて、みなさんは一番いいお薬は飲み薬だと思っていませんか?
飲み薬は口から飲み込み、消化管で吸収され、血液に入ることで効果を発揮します。しかしこの場合、効果を出したい部分以外にもお薬が回ってしまうので、薬の害(副作用)が出やすいのです。

その点、局所的な治療は全身性の副作用が出にくいので最も使いやすい薬といえます。この喘息やCOPDで用いられる局所療法がいわゆる吸入療法です。
喘息の治療で用いられる抗炎症薬として、一番大事なのは吸入ステロイド薬です。また、気管支拡張薬についても、息苦しいときに吸うとサッと効果がでる短時間作動型のものや長時間作動型のもの、交感神経を緊張させて気管支を広げるものや、副交感神経の働きを抑えて気管支を広げるものなど、いろいろな種類の吸入があります。

みなさんの中には、吸入薬を処方されたものの、使い方に戸惑った方もたくさんいらっしゃると思います。
吸入薬は飲み薬に比べてどうしても面倒な感じがしますが、有効性や副作用の面から考えると必要な薬です。ぜひ吸入の仕方を体得してほしいと思います。基本は大きく薬を吸い込み、5秒程度息を止めればOKです。

有用性の高い吸入療法ですが、局所的な副作用には気を付けなければなりません。吸入薬を使う際は、ドクターや薬剤師に必ず確認しておくようにしましょう。

(進藤 勉 12.11.09.)