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やさしい病気の話

今回は「高齢者の脱水について~放っておくと怖い「脱水」こまめな水分補給を心掛けましょう~」と題して阿部道浩先生が話題を提供します。

一般的な脱水の症状は、体内の水分が1リットル以上失われた場合に現れます。初期の症状にはさまざまなものがありますが、「食欲がない」「何となく元気がない」「最近物忘れがひどい」「少し熱っぽい」などの自覚がある段階で、すでに脱水状態となっていることがあるため注意が必要です。
もともと、年齢が上がっていくと体内の脂肪が多くなり、水分を多く含む筋肉が少なくなるため、体全体の水分量は減少します。
体内の水分は、細胞の中と外の両方(血液成分や細胞の周辺など)に存在していますが、若い人と比べて高齢者は、細胞の中の水分が30〜40パーセント少なくなります。(細胞の外の水分は保たれています)
さらに腎臓の機能が低下し、尿が薄くなることで、体内の水分が外に出やすくなります。また加齢に伴い、喉が乾きにくくなる(口渇機能の低下)ため、水分補給の量が少なくなります。

高齢者が脱水を起こしやすい病気には、風邪などの感染症や脳梗塞などの脳血管疾患のほか、がんなどの悪性腫瘍、心不全、認知症など、さまざまなものが挙げられます。
そのような病気を背景に、発熱や発汗、利尿剤の服用や下剤の乱用、さらには夜間の排尿が多かったり、 尿失禁を恐れて水分を取ることを控えたりすることなどが脱水を引き起こすと考えられます。
また、本人が置かれている環境にも注意が必要です。夏にもかかわらず窓を閉め切っていたり、冬に過剰な暖房を使用していたりすると、容易に体から水分が失われてしまいます。
さらに、一人暮らしの高齢者の場合などで、脱水状態とともに認知症の症状や精神症状(せん妄や幻覚 など)が気付かないうちに進行している場合があります。これらの症状は、脱水状態をさらに悪化させる 場合があるため、注意が必要です。

一人暮らしの方に限らず、周りが様子を見ているうちに入院が必要な状態にまで脱水状態が進んでしまうことも少なくありません。特に高齢者の場合は、入院をきっかけに自力で生活することが困難になることもあるため、症状が軽いうちに脱水の状態を改善することが大切です。
脳梗塞や心不全、認知症などを患った方には、家族や近所、医療福祉従事者を含む周囲の人が、注意深く接し、早い段階で変化に対応できるよう努めることが重要です。
私たち医療関係者も、高齢の方とご家族が安心して毎日を過ごせるよう努力いたします。

(阿部 道浩 13.07.08.)