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やさしい病気の話

今回は「子どもの発熱~どんなときに救急外来の受診を考えるべきか~」と題して深谷博志先生が話題を提供します。

子どもが夜中に急に熱を出したとき、「小児科はやっていないけれど、今すぐ救急外来に行ったほうがいいだろうか」とか、あるいは逆に「朝まで待っていても大丈夫だろうか」などと迷ったことはありませんか。
子どもの発熱の場合、最も多い原因は、やはり風邪です。残念ながら、現代医学をもってしても風邪を治す薬はいまだ存在せず、風邪をひいたときは体調の維持に努めながら回復を待つのが一番です。
しかし、場合によっては風邪をこじらせてしまうことがあります。細菌感染を合併した場合などに多いのですが、そのようなときは、ただ待つのではなく、病院を受診して治療を受ける必要性が生じてきます。

では、より具体的に、どのような場合に風邪がこじれたと疑ったらよいのでしょうか。つまり、夜間でも救急外来の受診を考えなければならないのはどんなときでしょうか。
子どもの場合、「水分が摂れないようなら要注意」とよく言われています。水分摂取の有無は風邪がこじれたかどうかを直接示すものではありませんが、病気を乗り越えていくための体力が残っているかどうかを判断する上で、重要でしかも簡単な見分け方です。
しかし実際は、ただの風邪であっても、発熱時には水分摂取に多かれ少なかれ支障をきたすため、すぐには判断できないことがあります。

そこで、一つの方法として私が勧めているのは、水分をうまく摂れていないようだというサインをキャッチしたら、まずは解熱剤を与えてみるというものです。
投与後、症状が少し落ち着いて水分が摂れたというのであれば、体力的にはまだ大丈夫で、風邪をこじらせている可能性も低い。逆に、解熱剤を使っても水分を摂ることができない場合には、体力の消耗が激しく、風邪をこじらせている可能性が高いと考えなければなりません。
つまり、解熱剤を使うのは熱を下げるためではなく、少し楽な状態をつくり、水分を摂らせるためなのだと考えてみてください。
よく、解熱剤を使ったのに熱が下がらないという相談を受けることがあります。たとえ熱が下がらなくても、少し水分が摂れるようになったのであればそれで効果は充分なのです。逆に、熱が下がっても水分が摂れない状態が続いたとしたら、夜中でも救急外来の受診を考えなければなりません。

このように、発熱時には、水分摂取の有無を確認し、状態が芳しくないようなら解熱剤を試して変化を見る、ということを意識してみてください。「熱さましをやったから終わり」ではないのです。

(深谷 博志 13.09.03.)