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やさしい病気の話

今回は「~増加傾向が見られます~ すい臓とその病気」と題して小野文徳先生が話題を提供します。

すい臓は、みぞおちとへその間くらいの高さで、胃の裏側の背骨に近いところにあります。奥深くに位置しているため、病気を見つけにくい臓器と言われています。長さ約15cm、重さは平均70gほどで、トウモロコシを横にしたような形をしており、小さな臓器ですが肝臓に負けないくらい重要な働きをしています。

すい臓から分泌されるすい液は、炭水化物、脂肪、たんぱく質をすべて分解します。また、血糖値を調節するインスリンやグルカゴンというホルモンもすい臓から分泌されますが、血糖値は高すぎても低すぎても健康を害するので、これらのホルモンの働きは大変に重要です。

このほかにも重要な働きをしているすい臓ですが、近年、すい臓の病気が増加傾向にあります。これは生活習慣病の増加と同様で、食生活の欧米化によって肉類や脂肪分の摂取が多くなったことや、お酒の摂取量が増えていることが原因と考えられています。すい臓が自分自身を消化して炎症を起こす病気は急性膵炎(すいえん) と呼ばれ、みぞおちあたりに急に激しい痛みが起こり、重症化すると短期間で死に至ることもある恐ろしい病気です。また、慢性膵炎は慢性の炎症によってすい臓の機能が低下する病気であり、原因の多くがアルコールで、喫煙により発生率は高くなり、おなかや背中の痛み、吐き気、倦怠感(けんたいかん)などが主症状で、進行すると消化吸収障害や糖尿病につながります。膵炎の発症にはストレスや不規則な生活、肥満、胆石なども危険因子になります。

また、すい臓がんも増加傾向にあり、臓器別がん死亡率では第5位になっています。自覚症状が出にくいため早期発見が難しいとされ、症状が現れた時にはすでに進んだ状態であることが多い病気です。最近では検査技術が格段に進歩し、超音波や内視鏡検査、CT、MRIなどによって多くの情報が得られ、早期発見や早期治療が可能になるケースも増えてきました。しかし、すい臓がんはまだまだ治療成績が良くないのが現状です。

健康診断で要精密検査と言われた方や、胃腸には異常がないのにおなかの不調が続く場合、黄疸(おうだん)がでた場合などは、すい臓の検査も受けましょう。すい臓は大変デリケートで、食事を含めた生活習慣やストレスの影響を受けやすい臓器ですので、脂肪やアルコールをとり過ぎないことやストレス解消に努めることが大切で、喫煙者や胆石のある方はより一層の注意が必要でしょう。

(小野 文徳 13.11.25.)