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やさしい病気の話

今回は「ピロリ菌について~がん予防のためには胃内視鏡検査を受けましょう。~」と題して下山維敏先生が話題を提供します。

ピロリ菌という言葉を耳にする機会が多いのではないでしょうか。正式名称をヘリコバクタ-・ピロリといい胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因の一つとされる胃の中に生息している細菌のことです。最近この菌が胃がんにも関係があるという事で注目されるようになりました。

胃液は強い酸性です。そのため、胃の中には細菌はすまないといわれてきましたが、1983年にオーストラリアの学者が胃に生息するこの細菌を発見しました。この菌はウレアーゼという酵素を持っていて自分の周りをアルカリ性にして酸性の胃液から自分を守って生きています。昭和30年以前に生れた世代では感染率が80%と高いのですが10代、20代では20%以下と言われています。感染源は飲み水ではないかと推測され、今の完備された水道水で育った世代の感染率は低下しています。

この菌に感染していてストレス等の要因が加わると胃潰瘍や十二指腸潰瘍が発生するといわれております。逆に潰瘍の患者さんのおよそ90%の方がこの菌に感染しています。潰瘍はもともと再発を繰り返す病気です。ところが、潰瘍の患者さんのピロリ菌を退治(除菌)すると、胃潰瘍で再発率およそ11%、十二指腸潰瘍ではおよそ7%と、再発が極端に少なくなります。潰瘍と診断されたら、この菌の感染の有無を検査し除菌治療をします。除菌が成功し潰瘍の治癒が確認されると、その後の治療は不要となり、再発の確率が低くなります。

また、この菌が胃がん発生の原因の一つである事が分かりました。この菌に感染している場合、10年間での胃がん発生率が2.9%との報告があります。

感染検査をする方法には、内視鏡で胃の粘膜をとって調べる方法や血液や尿の抗体価や、便の抗原を調べる方法、検査用の薬を飲んで呼気を調べる方法などがあります。除菌をするには、3種類の薬(胃酸の分泌を抑える薬と2種類の抗菌薬)を1週間服用して、1か月以上経過してから除菌できたかどうかを検査します。もし除菌されていない時は薬の種類を変えて再度試みる事もできます。

保険適応が認められているのは潰瘍と血液疾患などの特殊な3つの疾患のみでしたが、昨年2月末から胃内視鏡検査をしてピロリ菌感染胃炎が疑われたときはピロリ菌検査、またその後の除菌も保険診療でできるようになりました。胃がん予防のために大きく前進しました。是非胃内視鏡検査を受けて下さい。

(下山 維敏 14.1.15.)