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やさしい病気の話

今回は「受動喫煙を防ごう~社会環境の改善が必要です~」と題して大沢 佳之先生が話題を提供します。

日本は先進国のなかでは喫煙率が際立って高い国です。それでも喫煙率は年々低下してきています。最近の調査では男性で約30%、女性で約10%の喫煙率です。喫煙が健康に悪いことが認識されるようになってきたのでしょう。また、禁煙するのはとても難しいことなのですが、禁煙補助薬に健康保険が適応されたことで、医療機関における禁煙支援が保険診療で行えることになったのも大きいことだと考えられます。

たばこを吸っている人はさまざまな健康被害を自ら受けることが知られています。喫煙は肺がんをはじめとする各種のがんの発症を促進します。喫煙は動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳梗塞の危険因子です。喫煙はCOPDなどの慢性呼吸器疾患の原因になり、長年の呼吸困難や在宅酸素療法など、患者さんに長期間の苦痛をもたらします。

他人の吸ったたばこの煙を吸うことを「受動喫煙」と呼びます。この受動喫煙で健康被害をもたらされることが知られています。受動喫煙による健康被害が最初に指摘されたのは30年以上も昔のことで、夫がたばこを吸う妻が肺がんになる率は、夫がたばこを吸わない妻に比べ、2倍近くにもなるのだとの有名な研究が発表されました。受動喫煙の被害は小児では深刻であり、親の喫煙により家の中などで受動喫煙にさらされた子どもたちは、突然死症候群、喘息などの呼吸器疾患、中耳炎などの耳鼻科疾患の罹り患かん率が上昇してしまいます。また、成人においては受動喫煙により、呼吸器疾患のみならず狭心症などの心臓疾患の危険が増すのが大きな問題となっています。

受動喫煙による健康被害を防ぐため、職場や社会生活においてのさまざまな試みがなされつつあります。公共施設や公共交通機関の禁煙化はほぼ達成されてきています。昔は病院内でも灰皿が置かれ、たばこの煙が充満していたなど、現在では考えられないことです。しかし、飲食店の状況はまだまだです。子どもを連れた家族連れが訪れる店でさえ、禁煙の飲食店はまだまだ少ないのが現況です。ましてや酒類を供するような会合や飲食店ではまだまだ平然と灰皿が置かれ喫煙がまかり通っています。特にサービスにあたる従業員が自分の意志にかかわらず仕事中に受動喫煙にさらされることは、労働環境としても重大な問題です。飲食店でも禁煙が普通のこととなれば、美味しい空気と美味しい料理が味わえるようになり、客も従業員も受動喫煙から免れることができるようになるのです。

(大沢 佳之 14.10.30.)