• Home
  • やさしい病気の話

やさしい病気の話

今回は「患者さんと家族を支えるために~がんと緩和ケア~」と題して秋山博実先生が話題を提供します。

ある日のこと、緩和ケア科に紹介されて来た患者さんが「がんと言われ、抗がん剤治療を勧められました。昔、がんと闘って最期まで苦しんで逝った人を身近に見ています。このまま生きていくのはつらいです。どうか柔らかく死なせてください。」とおっしゃいました。緩和ケアは、重い病を抱えた患者さんの体やこころなどのつらさを和らげ、できるだけ自分らしい生活が送れるように支えていくケアで、命を縮めることではありません。

また、緩和ケアは、がんの治療ができなくなってから始めるものでもありません。体に限らずこころのつらさが大きいと、がんの治療を続けることが難しくなります。そのため、がんと診断されたときから緩和ケアを始めることが大切です。前述の患者さんは、緩和ケア科の外来へ通っている間に、「家族のためにもう少し長く生きていたい」と話し、治療科で抗がん剤治療を受けました。

緩和ケアは一般病棟でも受けることができます。症状緩和の専門医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、管理栄養士、リハビリ専門職などからなる「緩和ケアチーム」が主治医や担当看護師と協力して緩和ケアを行います。

緩和ケアを専門的に行う病棟は「緩和ケア病棟」と呼ばれています。緩和ケア病棟はがんの治療を行うところではなく、体やこころのつらさをできる限り和らげる治療やケアを提供する病棟です。緩和ケア病棟では患者さんと家族が静かで穏やかな環境で生活できるように工夫されています。

大曲厚生医療センターではオープンと同時に緩和ケア病棟が開設されました。緩和ケア病棟はルーフガーデンに面しており、天気のいい日にはベッドごとガーデンに出て、日光浴やボランティアの方々が手入れしてくれているバラの花を楽しむことができます。緩和ケア病棟へ入院している間に、つらい症状が落ち着いたときには、緩和ケア病棟をいったん退院して自宅で過ごすことも可能です。自宅にいて、つらい症状が出てきたときには、緩和ケア病棟へ再び入院できます。

緩和ケア病棟では談話室の大きな窓やガーデンから西山や奥羽山脈の山並みが見渡せ、季節の移ろいを感じながら、患者さんと家族がいっとき、体とこころを休めることができるものと考えています。

大曲厚生医療センターで行われている緩和ケアについて詳しく知りたい方は、担当の主治医や看護師または当院のがん相談支援センター(0187-65-8105/受け付け時間 月〜金曜日 午前8時30分〜午後5時)へご相談ください。

(秋山 博実 15.12.03.)