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やさしい病気の話

今回は「病気の代表は「痔」です―おしりの話」と題して山下榮敏先生が話題を提供します。

おしりの病気といえば、その代表は痔(ぢ)です。痔は人類が誕生したときからあったと思われます。痔は直立歩行をする人類の宿命ともいえる病気なのです。ヒトのおしりは四つ足の動物とちがって、心臓より低い位置にあるのでうっ血しやすいことが原因と考えられているからです。さすがに人類誕生のころの記録はありませんが、古代中国では紀元前3、4世紀の書物に痔の名称がみられるそうですし、紀元前2500年頃のエジプト宮廷に肛門病の医師がいたとの記録があります。

近年では、低繊維・高脂肪の食生活や睡眠不足、運動不足、ストレス等により便秘になる人が多くなりました。この便秘こそが痔の最大の原因なのです。この生活習慣を改めることが痔の予防や改善の近道と考えられます。

痔にはおよそ3つの病気があります。最初にもっとも頻度の多い痔核(いぼ痔)を説明します。これは直腸肛門部の血行が悪くなり血管の一部が膨れ上がるものです。痔核には内の粘膜にできる内痔核と外の皮膚の部分にできる外痔核があります。外痔核は痛みを伴いますが、内痔核では普通痛みはないため、出血や痔核が肛門から脱出することで気付くことが多いようです。進行すると便器が真っ赤になるほどの出血や脱出した痔核を指で押し込めなくなります。

次に裂肛(切れ痔)です。これは硬い便によって肛門が切れるもので、男性より女性に多くみられます。出血は紙につく程度ですが、激しい痛みを伴うため排便を我慢して便秘になり、さらに症状を悪化させます。

最後に痔瘻(ぢろう)(あな痔)です。直腸と肛門の境界にある小さなくぼみに細菌が入り込み化膿し、膿が肛門周囲の皮下に溜りやぶれることで痔瘻が形成されます。排膿すると一時治まりますが、治った訳ではなく繰り返すことが多いようです。

痔の治療には、大きく分けて薬物療法と手術療法、注射療法があります。どの治療を選択するかは病気の種類、進行の程度によって異なるので医師と相談してください。

痔と似た症状の病気に大腸がんや潰瘍性大腸炎などがありますので、一人で悩んだり、我慢しないことが何より大事です。

(山下 榮敏 16.09.01.)