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やさしい病気の話

今回は「早期発見・早期治療が肝心です―大腸がん検診と大腸内視鏡検査について」と題して下山雅朗先生が話題を提供します。

食生活の欧米化に伴い、日本では大腸がんが増加してきています。大腸がんは、全国のがんの部位別死亡率を見ますと、男性では第3位、女性では第1位のがんです。秋田県の大腸がん死亡率は全国第3位であり、秋田県では2012年に約2千人の方が大腸がんに罹患しています。

罹患率も死亡率も高い大腸がんですが、早期大腸がんの5年生存率は90%を越え、他部位のがんに比べても予後は比較的良好です。早期発見・早期治療が大腸がん治療の肝なのです。

ごく早期の大腸がんは症状が出ないことがほとんどです。現在行われている大腸がん検診は便潜血反応といい、少量の便を提出してもらい、そこに血が混じっているかどうかを調べる検査です。もし血が混じっていた場合大腸内視鏡などの精密検査を行うこととなります。便潜血反応は非常に鋭敏な検査法であり、便に混じったごく少量の血液でも陽性となります。ただし、痔からの出血でも要精検となってしまいます。便潜血による検診を受けている群と受けていない群を比較した場合、受けている群の大腸がんの死亡率が大幅に低下するという良好な結果が出ています。便を少しこすり取るだけですので、痛みなどの苦痛を伴わず、安全で、コストも低く抑えられ、一度に大量の拾いあげをする一次検診としては非常に優れていると言えます。

では、便潜血による検診を受けてさえいれば大腸がんが早期で見つかるかと言われれば、答えは「No」です。検診を受けていても必ずしも早期で見つかるわけではないのです。私はこれまで数多くの大腸がん手術を行ってきましたが、毎年検診を受けていても進行がんで発見されたということを少なからず経験しています。特に盲腸や上行結腸など、肛門から遠い大腸のがんでその傾向があると思います。

では、大腸がんを早期の段階で見つけるにはどうすればよいのでしょうか。一番の方法は大腸内視鏡検査です。これはおしりから内視鏡を挿入して大腸の中を直接診る検査です。直接診るので早期がんや、前がん病変を見付け出し、ごく早期のものはそのまま切除をして治療が完了することもあります。ただし苦痛を伴う場合があること、100%安全な検査ではないこと、施行できる医師が多くないこと(高度の技術を要します)、医療費の面などから一次検診としては残念ながら不向きです。

大腸がんは40歳以上で増え始めます。大腸がんは珍しい病気ではありません。ぜひ検診を受けてください。そして出来れば一度、大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。

(下山 雅朗 17.12.05.)