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やさしい病気の話

今回は『「特養」と「老健」の違いをご存知ですか―介護老人保健施設について』と題して五十嵐 潔先生が話題を提供します。

公的介護保険の介護サービスは大きく「居宅サービス」と「施設サービス」に分けられます。居宅サービスは自宅に居ながら利用できる介護サービスで、訪問介護、訪問入浴、訪問看護、通所介護(デイサービス)、通所リハビリ、ショートステイ、小規模多機能型サービスなどのほか、多岐にわたりさまざまなサービスがケアマネジャーの作るケアプランに従って利用できます。満足度の高いサービスを受けるためには、ケアマネジャーとの間で良好なコミュニケーションを保つことが大切です。

大仙市内にある施設サービスを行う介護保健施設は、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム、特養)と介護老人保健施設(老健)の2種類です。特養は要介護3以上の方が入所でき、入浴、食事、排泄などの介護が中心の施設です。終(つい)の棲家(すみか)として生活されており、終生施設ともいわれています。ただ、入所を希望し待っている方が施設によっては数百人もおり、なかなか入所できないのが現状です。

一方、老健は病状が安定期にあり、入院治療をする必要はなく、リハビリや看護、介護を必要とする要介護の方が入所する施設で、家庭への復帰を支援する中間施設ともいわれています。常勤医師がいることが義務づけられていますが、医療を行う面では大きなハンディがあります。老健の収入源は介護保険です。入所者の薬、注射、点滴、急性疾患で病院を受診したときの検査、薬にかかる費用は、医療保険が使えませんので、原則としてほぼ全額10割、施設の持ち出しとなります。制度的な問題とはいえ施設の経営収支を考えると、病院退院後も高額な新薬の服用が必要だったり、定期的に高額の注射が必要な方は入所させるのが難しくなったり、というジレンマがあります。

マヒやけがの症状が安定した入所者を、3カ月ごとに見直しを行い、自宅で生活できるようにするための調整を、家族と共に居宅ケアマネジャーとの間で行います。しかし実際には、認知症が重度で退所先が見つからない、身寄りが遠方にいて協力してもらえない、家族の理解が得られない…などのさまざまな理由で入所が長期化している実態があります。老健が特養化し、本来の機能、役割が十分に果たされていないのです。

国は、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを生涯送ることができるように、医療・介護・福祉サービスを切れ目なく提供する「地域包括ケアシステム」の構築を推進しています。大仙市でも地域の特性に応じたシステムを作るため動き始めました。その中で、私たち老健も、医療やリハビリ、看護、介護ができる施設として、在宅復帰支援や在宅療養支援の機能を強化し、このシステムに積極的に参加していこうと考えています。

(五十嵐 潔 17.8.2.)