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やさしい病気の話

今回は『明るく前向きな人生を送るために―「美容医療」について』と題して後藤 眞暎先生が話題を提供します。

皆さんは「美容医療」という言葉を聞いて何を思い浮かべますか。怪しい? 治療費が高い?顔にメスを入れる?どの印象もある意味正しくもあり、間違ってもいます。

戦後、怪しい「美容整形」クリニックが乱立した時期があり、いろいろなトラブルが起こったため、もしかするとネガティブなイメージをいまだにお持ちの方もおられるかもしれません。

しかし、これらは安全性が確立されていない製剤や術式が横行していた時代の話です。現在では、「美容外科」「美容皮膚科」は医療法に定める標榜科(ひょうぼうか)に含まれ、正式に医療として認知されています。エステサロンでの永久脱毛やシミの治療が明確に違法であることが示された今、根拠に基づく医療の中での美容というものに注目が集まっています。

手技ではより安全で効果的な術式が正式な学会で発表され、医療機器では製薬会社と同じくさまざまなメーカーがしのぎを削って開発競争を繰り広げています。さまざまなニーズに対応した施術が生み出され、それぞれの分野で発展を遂げています。今話題の自己幹細胞を用いた施術も、美容の分野ではすでに臨床応用が始まっています。

美容医療が人の心に与える影響も調査されており、最近の海外の研究では、うつ状態にあった人の眉間のシワを治療すると、病状が改善したという研究結果もあります。高額なぼったくりを行う医院は淘汰(とうた)されました。治療費は今やエステサロンと変わらないか、効果を考えると安くつく場合がほとんどです。美容医療の有用性が認知されてきたからこそ、世界的に普及し、ライフスタイルに取り入れられつつあるのが現状です。

では、美容医療では実際にどんな治療ができるでしょうか。ほくろやしみといった皮膚の病変を取ることができます。目を二重にしたり、鼻を高くしたりすることができます。たるんだ皮膚を持ち上げることができます。多すぎる毛や脂肪を減らすことができます。ワキの汗を止めることができます。シワをなくすことができます。きれいな肌になることができます。髪の毛を移植したり、胸を大きくすることだってできるのです。現在では、注射や機器を使った治療が多くなり、メスを使用したいわゆる「美容外科」との比率は逆転しています。

美容医療は、治療しなければ命に関わるというものではありません。しかし、治療により快適な生活を送れたり、コンプレックスから解放されたり、加齢に伴う変化を改善できれば、その人の人生はより前向きで力強いものになるでしょう。「美容整形」という言葉はもはや過去の響きです。病気に伴う困難を改善することが従来型の医療の目的なら、前向きな人生を送るための手助けとなるものが美容医療なのです。

(後藤 眞暎 17.12.18.)