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やさしい病気の話

今回は『体内時計と光の話』と題して三島 由美子院長が話題を提供します。

みなさんは、時差ボケの経験はありますか。海外旅行に行ったことがない方でも、意外な形で時差ボケを体験していることがあります。夜はいつまでも寝付けず、昼過ぎまで目が覚めない。逆に夕方早々に眠くなり、夜中に目が覚めてしまう。このような場合、睡眠を調整する体内時計が、望ましい睡眠時刻からずれてしまっている可能性があります。体内時計のずれは日中のだるさなど、さまざまな不調を引き起こしますが、これは実際の時刻と体内時計のずれが引き起こす一種の時差ボケと言えます。

ヒトの体内時計は目の神経の奥にあります。多くの人の体内時計の一日は24時間より少し長く、朝晩の変化が分からない状況で過ごしていると、少しずつ睡眠のタイミングが遅くなってきます。これを毎朝強い光を浴びることで24時間にリセットしています。普段、寝不足がたまって休日に遅く起きると、朝の光を浴びられず、遅寝遅起きに体内時計がずれてしまいます。休日明けの起床がつらくならないためには、休日もなるべくいつもと同じ時刻に起きましょう。そのためにも普段から寝不足をためないように気をつけることが大事です。寝不足を解消する場合でも、いったん目を覚まして朝日を浴び、短めの昼寝で眠気をとれば体内時計のずれは小さくて済みます。

リセットがうまくできないと、体内時計が遅れ、深夜まで寝付けなくなります。また、夜に浴びる光は、体内時計をさらに遅寝遅起きに動かします。眠れない夜にコンビニなどで強い光を浴びてしまうと、寝付きはさらに悪くなります。パソコンやスマホの光に含まれる青色光も光は弱くても体内時計を動かす力がありますので、眠れないからとゲームや動画などを夜に見ることも避けましょう。逆に、夜明け前から目が覚めると、早朝から日を浴びるため、体内時計が過剰に早寝早起きにずれていきます。高齢者に多いパターンです。加齢とともに長く眠る力も弱まりますので、早く眠るとその分深夜から目が覚めてしまいます。このような場合は、夕方の散歩などで就寝に近い時刻に明るい光を浴び、夜は少し夜ふかしをしてみましょう。

体内時計のずれが大きくなって困っている方は、必要な光を取り入れず、不要な光を浴びている可能性があります。「眠りの時間帯を早くしたい場合は起きたてに、遅くしたい場合は寝る前に、光を浴びる」という工夫をして、眠りに潜む時差ボケを解消するようにしてみましょう。

(三島 由美子 19.11.01)