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やさしい病気の話

今回は『飛んでいるように見えるモノの正体-飛蚊症(ひぶんしょう)について』と題して髙橋 永幸先生が話題を提供します。

今回は、よくある目の症状のひとつについてお話いたします。「目の前に何か飛んでいるように見える」という症状を「飛蚊症」といいます。見えるものは黒点や糸くず、時には輪のような形をとります。原因には、治療の必要が無いものと、必要なものがあります。

治療の必要が無いものは「生理的飛蚊症」と言って、誰でも明るいところ(例えば青空や白い壁)を見ると、黒いものが飛んで見えることがあります。眼球の中には、硝子体(しょうしたい)というゲル状の透明な組織が詰まっていますが、小さい細胞や線維などが混ざっていて、それが眼底に映って飛んでいるように見えます。また、硝子体は年をとるにつれて縮み、眼底から浮き上がってきます。「後部硝子体剥離」という加齢性変化のひとつです。これが起こると飛蚊症が強くなることがありますが、数ヶ月のうちに症状が和らいでいきます。

このほか、ケガや糖尿病などで目の中に出血した場合(硝子体出血)、目の中に炎症が起こった場合(ぶどう膜炎)、網膜に穴があいて剥がれた場合(もうまくれっこうもうまくはく)などの目の病気によっても飛蚊症は起こります。この場合は、原因になっている病気の治療が必要になります。

飛蚊症の多くは、生理的なもので治療の必要はありませんが、一度発生すると完全に消えることはありません。飛んでいる数が数個程度で急に増えたりしなければ、あまり気にせずに様子をみてください。目や頭をぶつけた後、急に発生した飛蚊症の場合は、目の病気の可能性が高いので早めに眼科を受診して、眼底検査を受けてください。また、後部硝子体剥離に伴って、硝子体出血が起こったり、網膜剥離になったりすることがありますので、中年以降になって急に飛蚊症が発生した時も、念のために眼底検査を受けてください。

なお、眼底検査の際には、瞳を広げる目薬を点眼します。半日は、視界がぼやけて車の運転ができなくなりますので、他の人に送迎を頼むか、公共交通機関を利用し、受診してください。

(髙橋 永幸 20.05.07)