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やさしい病気の話

今回は『医療現場で大活躍しています-医療機器の進歩』と題して大石 光院長が話題を提供します。

医療機器の進歩は検査や治療だけではなく、研究分野でも素晴らしいものだと思います。私は脳外科医ですが、特に検査用機器の進歩にはとても助けられています。

私が医者になったころは、まだCTスキャンが普及していませんでしたので、ほとんどの病院では脳腫瘍(のうしゅよう)や脳内出血、脳梗塞(のうこうそく)および外傷による頭蓋内出血もすべて血管撮影に頼って診断していました。そのころの血管撮影は、首の頸動脈に直接針を刺し、そこから造影剤を注入して頭蓋内の血管を写すものでした。かなりリスクもありますし、患者さんにとっても恐ろしい検査だったと思います。

最近は首から針を刺す方法ではなく、腕や大腿部の動脈からカテーテルを入れて検査しますので、リスクも恐怖感も少ないと思われます。しかし、血管撮影で写るのは血管であって、脳そのものは写りません。血管の走行を見て、その傾きなどからその血管の周囲の脳そのものの状態や、血腫や脳腫瘍の存在を想像して診断していました。

CTスキャンが出たときは、脳そのものが直接見えるものですから、驚きましたし感激したものです。最初のころのCTスキャンは撮影に30分もかかり、放射線ですのでリスクもあるものでした。それでも血管撮影に比べれば直接脳を見て診断できるものですから確実であるため、私たち脳外科医は大いに助けられました。そしてCTスキャンは脳だけではなく、全身の臓器の診断もできるように発達しました。

その後、MRIという装置が発明されました。これは放射線を使わない装置ですから体に影響が少なく、何回検査してもリスクのない検査です。これも断層撮影ですので脳そのものが直接見えます。また、CTスキャンに比べてより多くの情報を私たちに与えてくれますし、造影剤などを使わなくても血管が見えるので、大変役に立っています。

まだ発明されてから年数があまり経っていませんので問題点はあります。一つは検査に20分近くかかることです。CTスキャンでは初めのころ30分かかっていた時間が最近は数分でできるようになったので、今後さらに改善され、短時間で検査できるようになるだろうと期待しています。そして、検査の内容もさまざまな脳や血管の状態を表せるようになってきましたが、さらにもっと精密な脳やその他の臓器の状態を写し出せるようになると思います。今後はリスクのない、そして正確で早い検査方法がますます発達することを楽しみにしています。

(大石 光 20.09.01)