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やさしい病気の話

今回は『採血検査はあくまでも診断の補助です−食物アレルギーの診断』と題して深谷 博志院長が話題を提供します。

「食物アレルギーがあるか検査してほしい」あるいは「以前に検査して現在除去中だけど、再検査をして除去を終了できないか診てほしい」などという相談を受けることが多くなっています。おそらくみなさんは採血検査で診断が出来ると思っていらっしゃると思いますが、これ、違うんです。今回は、この食物アレルギーの正しい診断についてお話します。

現在、一般的に行なわれている採血検査は、それぞれの食物ごとの「IgE抗体」の量を測るという検査です。これが高ければ、その食物を摂取したときに発症する可能性も高くなります。採血のみで簡単にできる検査なのですが、難点は、偽陽性という本当は問題ない値なのに陽性となってしまう紛れ込みが多いという点です。つまり、この値が高くても、必ずしも症状が出るわけではないということになります。さらには、逆に陰性でも発症してしまうこともあり、アレルギーがないという証明にも使うことはできません。ですから、この採血検査はあくまで診断の補助として用いるものであって、これだけでは食物アレルギーの確定診断を行うことはできないのです。

ではその確定診断は、どうすればできるのでしょうか。それが「食物経口負荷試験」という検査です。アレルギーを疑う食物があるなら、それを実際に摂取して症状が出るか確認するという検査です。実際に摂取するので、発症してしまうというリスクもあります。ですので、そう簡単にできる検査でもありませんが、現在のところは、これが正確な診断をするための唯一の検査といわれています。

ではどういう場合に、負荷試験が勧められるのでしょうか。多いのは、以前に発症して除去しているけれども、だいぶ時間が経過しているというケースです。採血検査ではいまだ陽性だとしても、時間経過とともに食べられるようになっていることはよくあることなので、必ずしも除去継続が必要でない場合もあります。他には、慢性湿疹などで採血検査をして陽性となり、除去後は湿疹が安定しているというケースです。採血検査以前には摂取して問題なかった食物であるとか、未摂取のまま除去となった食物であるなら、なおさら検討してみて良いかと思われます。当然リスクはありますから簡単ではありませんが、再び食べられるようになるかもしれないというメリットと天秤にかけて、検討してみてください。

(深谷 博志 21.05.06)