麻疹(はしか)について
 
             
現在、東京都内を中心に麻疹の流行が続いており、特に成人麻疹(20歳代)は大規模な流行になっています。幸い秋田県内ではまだ散発的ですが、例年初夏が流行の最盛期であり、今後は一層の注意が必要となります。

●麻疹流行(成人)の背景  −どうして20歳前後の人に流行してきたのでしょう。−

2005年までの麻疹の予防接種は一回だけ(1歳時)でした。そしてその接種率が80%と十分でないこと、一回の接種で効果のない人が5%前後いること、予防効果が10年以上経過すると減弱してくる場合があることが考えられます。中高年の人は麻疹の流行が通常であった幼児期に自然感染を経験しており、麻疹に今後かかる可能性が極めて低いといえます。

●予防法  ーどうやってかからないようにしたらいいのでしょうかー

まず、母子手帳などで過去に麻疹の予防接種を受けたかを確認してください。受けていなければ、なるべく早く予防接種を受けてください。予防接種を受けた方も、周囲に麻疹の患者さんがいる場合、二度目の接種を受けたほ うがいいでしょう。予防接種は麻疹の患者さんとの接触後72時間以内であれば、緊急接種により発症予防効果が期待できると言われています。自分が麻疹に対する抵抗力を持っているかは血液検査で調べられます。しかし、保険適応外で数千円の負担となること、検査に多くの方が殺到したため、試薬不足で検査不能となっている医療 機関が多いのが現状のようです。

●感染経路、潜伏期   
飛沫、空気感染で鼻、喉の粘膜から感染し、症状が出るまで10〜12日です。

●病原体は?

  麻疹ウイルスによる病気で、ウイルスは、熱、光りなどによって不活化されやすく、空中や物の表面では数時間で不活化します。しかし、その感染力は強く、患者さんの身近の人が免疫のない場合、90%以上の確率で感染します。他人への感染期間は、発病2日前より発疹出現5日後位までと言われています。

●麻疹の症状  −どんな病気で、どんな症状が出るのでしょうー

初期症状として、2〜5日間、「カゼ」に似た症状(発熱、せき、鼻水、咽頭痛)が出現します。この期間が最も他人に移りやすい時期で、この期間に麻疹の診断をつけるのが流行を広げないために重要です。「カゼ」との違いは、この時期に口の中(ほっぺたの裏側)にコプリック班と呼ばれる白砂のような斑点を見つけることが重要で、また黄色い目やにを伴う結膜炎も麻疹を疑わせる症状と言えます、初期症状から4〜5日後に赤い発疹が出現します。耳後面、顔面から出始めて、しだいに下方に広がり、互いに融合して地図状になることがあります。8〜10日後になると、肺炎など合併症が起こらなかった場合、熱は下がり、発疹もしみを残して消失していきます。

●診断 −どのように診断されるのでしょうー

定型的な症状の患者さんは、コップリック班などから診断は容易ですが、抗体が残存している乳児やワクチン既接種者では非定型的な経過をとることもあり(コップリック班を見られないなど)、診断が難しい場合もあります。確定診断は、咽頭などからウイルスを分離するか、血液検査で抗体価の上昇からなされます。

●治療は?
残念ながら麻疹ウイルスそのものを抑える治療法はありません。安静と対症療法が中心で、細菌性合併症(肺炎など)を併発した場合は抗菌薬の投与が必要になります。

●最後に皆さんに考えていただきたいこと

麻疹に限らず、インフルエンザ、風疹など伝染性ウイルス感染症は、まずかからないように予防することが最も重要で、そのために予防接種をぜひ受けて下さい。特に家庭内に感染して重症化しやすい人(乳幼児、妊婦、体の弱いお年寄り)がいる方は、自分自身のためだけでなくその人のためにも、感染予防を心がけていただきたいと思います。また「カゼ」のような症状が起こった時は、他の人にうつして感染を広げないように、マスクをして、せき、くしゃみなを人の目の前でなるべくしないようにする「せきエチッケト」を守りたいものです。

大曲仙北医師会   高津 洋


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