ノロウイルス感染性胃腸炎について

ノロウイルスによる感染性胃腸炎が今年は例年以上に流行しています。その発症を防止するため、正しい知識と予防対策について考えたいと思います。

@まず、ノロウイルスによる感染性胃腸炎とは、どんなものでしょうか。

 ノロウイルスは手指や食品などを介して経口的に感染し24〜48時間の潜伏期間の後、嘔吐、下痢、腹痛、発 熱などを起こします。症状には個人差があり、大変な苦痛を伴う人もいますが、「おなかにくる軽いかぜ」程度ですむ人もいます。しかし、症状の軽い人でも感染力は強力で、少量のウイルスでも他人に感染してしまいます。また症状が治まった人でも、1週間まではウイルスが便の中に排泄されるため、食品を扱う人は他人に感染させないように手洗いの励行など注意が必要です。

Aどのように感染するのでしょうか

 (1)汚染された貝類を、生あるいは十分加熱しないで食べた場合

 (2)食品取扱者(食品の製造に従事する人、飲食店及び家庭での調理者)が感染しており、その人を介して汚染 した食品を食べた場合

 (3)患者さんのノロウイルスが多量に含まれる糞便や吐物から人の手を介して二次感染した場合

 (4)家庭や共同生活施設など人同士の接触する機会の多い所で人から人へ飛沫感染等直接感染する場合

 (5)ノロウイルスに汚染された井戸水や簡易水道を消毒不十分で摂取した場合

などがあります。

Bどのように診断されるのでしょうか

 インフルエンザウイルスと違って、簡単にすぐ分かる検査方法はありません。患者さんの糞便や吐物を用いて、電子顕微鏡、遺伝子を検査して診断され、時間とお金がかかります。また検査は保険適応外(実費約1万円)ですので、 医療機関で一般の患者さんに検査することはほとんどありません。したがって病院でノロウイルス感染症と確実に診断することは困難で、流行状況などからノロウイルス感染症の疑いが強いということになります(同じような病状が他のウイルスや細菌などでもおこるため)。学校、施設などで集団発生した場合にはじめて保健所を通して検査されます。

Cどのように予防するのでしょうか

 まず調理や食事をする時やトイレの後に、石鹸でよく手洗いすることが最も重要です。また流行期間は、病院、デパートなどの人の集まる所から帰宅した時も注意すべきです。貝類を食べる時は十分に加熱します。(85℃1 以上)また貝類を調理する時に使用したまな板や包丁などが他の食品を汚染して感染することがありますので、熱湯や塩素系消毒剤(ハイターなど)で消毒します。

D家庭内でノロウイルス感染症疑の人が出た場合どうすればいいのでしょうか。

 まずノロウイルス感染症の流行しやすい時期(11月から4月頃)に、吐き気あるいは嘔吐に下痢及び発熱を伴った場合は、ノロ ウイルスに感染したと考え、他の人に感染させないように注意すべきです。感染症疑の人は、手洗いをこまめに行い、手洗のタオルなどは共用しないようにしてください。またトイレでは必要以外の場所はなるべく触れないようにして、便器、水道の蛇口、ドアノブなどはハイター(100倍に薄めて拭き、金属は腐食するため10分後に拭き取る)で消毒します。下痢の続く間は入浴は控え、症状が改善後もしばらくは家庭内で最後に入浴するようにしましょう。下着は消毒剤あるいは85℃以上の熱水で消毒してください。床などに飛び散った吐物や糞便を消毒する 時には、使い捨てのマスクと手袋を使用してください。汚物中のウイルスが飛び散らないように、ペーパータオル等で静かに拭き取ります。拭き取った後は、消毒剤で浸すように床を拭き取り、その後水拭きします。

E食品取扱者が注意すべき点はどこでしょう。

 食品への二次感染を防止するため、食品取扱者は日頃から自分自身の健康状態を把握し、下痢や嘔吐、風邪 の様な症状がある場合、食品を直接取り扱う作業に従事しないようにすべきです。ノロウイルスは、下痢などの症状がなくなっても、通常1週間、長い時は1ケ月程度ウイルスの便への排泄が続くことがあるということを意識して仕事に復帰すべきです。

F発生した場合の治療法は

 現在、ノロウイルスに効果のある薬はありませんので、症状に合わせた対症療法が行われます。安静とこまめな水分と栄養の補給を充分に行って下さい。脱水症状の強い場合は、病院で点滴治療が必要になります。

G感染が疑われた場合どこに相談すればいいのでしょう。

 保険所やかかりつけの医師にご相談してください。保育園や学校や高齢者の施設などで集団発生した場合は、早く診断を確定し、適切な対策により、感染の拡大を防ぐ必要がありますので、速やかに保険所にご相談ください。

以上、ノロウイルス感染症について、なるべくかからない、かかった時に感染を他に拡大させないという視点から、注意点を述べてみました。感染症に対して正確な知識を持ち、手洗い消毒など、基本的なことを適切に行えば(特に患者さんも)ノロウイルスによる感染性胃腸炎は決して怖い病気ではありません。最後に、これらの基本的な感染症予防対策は、将来の流行が懸念される、新型インフルエンザにも通じることであると考えます。

大曲仙北医師会 感染症担当:高津 洋(2006,12,26)

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